お客様から依頼された扇が上がって参りました。
家紋をあしらったものでありまして「宮脇売扇庵」さんへの別注であります。
依頼の主は「
自然から元気」のりっちゃんでして、「扇に家紋って入ります?」
と聞かれましたのが先月のことでありまして、よほど細かいものでなければ
充分出来ますよってぇことでお受けさせていただきました。
黒い扇面に、黒焚きの竹を骨に使いましての扇でありまして、
この骨に金蒔絵で「丸に方喰」の家紋を入れさせていただきました。
プリントや印刷ではなく、蒔絵師の手による手描きであります。
片面には日向で、もう片面には影で家紋を入れさせていただきました。
手描きの蒔絵というのは職人も少なくなったんですが、深刻なのは
道具がなくなりつつあるってぇことなんですな。細かな線を均一に長く
描こうとすれば、それなりの特殊な「筆」が必要になります。
この特殊な筆、何が特殊かと申しますと、その筆に使う「毛」なんです。
琵琶湖の北西岸に、古くから生息する鼠がおりまして、その鼠の「脇の毛」を
使っているってんです。それが最近環境汚染なのか理由は定かではないにしろ
いなくなってるってんですな。
今回依頼をした、蒔絵師の方のところにある筆はあと五本。
それがなくなれば、細かい細工を描けなくなるってぇことであります。
貴重な技と道具でありまして、是非何とかこの技術を後世に残して
もらいたいものでありますな。
さてさて、りっちゃん、旦那様への贈り物だてぇことでありますが、
大事に使っていただければと思う次第でございます。
ありがとうございます。
(素晴らしい贈り物だな)