祭り絆纏のほかに「店(たな)絆纏」といったものがあります。
「お仕着せ(おしきせ)」とも言いまして、いわばお店のユニフォームであります。
「○○電気のバーゲンセール!」みたいなときにきている絆纏も、
「お仕着せ」ということになりますな。
女房の「ぶん屋お仕着せ」であります。
襟文字は「文屋」の「篆書」であります。
書道をされておられる方ならお判りかと思いますが、
「篆書」は甲骨文字を使っていた古代中国において、
時の帝の命により、初めて漢字として編纂された、
「帝王の文字」であります。
それを、型染めではなく、反物に直に伏せ糊を置く、
「筒書き」という手法で染めたものであります。
背中の大紋は「ぶん屋印」であります。
これは通常の型染めです。
生地は、浴衣などに使用する「阿波しじら織」でありまして、
麻の生機(きばた)を海老茶で染めたものです。
生機というのは、染めていない糸を織ったものでして、
これに、染まって欲しくない場所、大紋や襟文字の、
白場(しらば)になるところへ、染料が入らない防染糊を型を使ったり、
直に書いたりといった手法で置き、染め上げます。
これを「後染め」といいます。
反対に、染めた糸を織り上げた反物のことは「先染め」といいます。
大紋を白く抜いたり、朱を差したりするような、絆纏、暖簾、手ぬぐいなど、
後染めのほうがよい場合には生機が必要になりますな。
私の個人絆纏であります。
(女房も同じものを持っています。)
襟文字は苗字の「むら上」の「籠字(かごじ)」です。
籠字というのは、筆で書くものではなく、
薄紙の上から文字をなぞって輪郭を拾ったものや、
輪郭の中を塗りつぶしたもののことを言います。
字体はいろいろありまして、行書や隷書、篆書、
草書はもちろん、変体かな文字や
歌舞伎の文字として使われる、勘亭流、
江戸文字と呼ばれる、寄席文字や相撲文字、
千社文字、など、実にさまざまであります。
特に、千社文字のなかで、いなせで勢いのある文字を考案した、
書家である「高橋 藤」の文字は、「絆纏文字」として非常にポピュラーでありますな。
背中の大紋は「丸に文」、家紋であります。
生地は綿の「邑織(むらおり)」というものでありまして、
一昨年あたしと紺屋が開発した織物です。
目の詰まったところと空いているところを作り出すため、
薄い色で染めると目の詰まったところは濃く、
空いているところは薄く、「むら」になるのでこの名前になりました。
比較的薄地でして、軽く、その割りに強いといった特徴があります。
祭り絆纏の生地としてもかなり合うのではと思っています。
色は、あたしの好きな「銀ねづ」であります。
着物を着て、ちょいと肌寒い時なぞは、
これをちょいと背負って、女房とコーヒーを飲みに行くときもあります。
(ドトールが多いかな)
街中で見かけても石を投げないでください。
あはは