あたしは結婚には一度失敗をしておりまして、息子と二人の暮らしを
しておりましたが、正直再婚をするのは面倒でってぇのが本音でした。
あたしは在日韓国人二世でして、親にも反対されるだろうなってぇのも。
しかしね、そんな重たいケツを上げさせたのは女房であります。
ま、いろいろと大変な時期に、日向になり、影になり支えてくれたこいつを
泣かせちゃなんないなんてぇことをね、思ったんです。
ま、
女房のほうがいろいろと決断が必要だったんじゃねぇのかなってぇ事も
思いましたが、こいつは俺が守っていこうと。ま、あたし自身がそれで幸せに
なれるなんてぇ図々しい事も考えておりました。(わはは)
で、当時は存命だった親父の元へ行くまでに何年かの月日を要しまして、
こいつと一緒になりたいんだなんてぇことを、意を決して言いましたら、
いい娘さんじゃないか、うまくやれとあっけなく言われまして、なんだか
力が抜けた思い出もありますな。
お袋は手放しで喜びまして、女房に韓国の民族衣装であるチマ・チョゴリを
誂えてくれることに。女房はあたしの両親に、特に親父には好かれていたんですな。
ま、あたしがあまり出来がよくないので親は心配していたようでして、女房が一緒に
なるってんで安心したようでありました。
凧が終わったら入籍をしようと、結婚式を揚げる資金もねぇし、ましてやお披露目なんぞ
やれる身分じゃねぇからと思っていたんですが、中澤町男子会が音頭を取ってくれまして、
ホテルコンコルドで会費制の披露宴まで用意してくれた。ありがたかったな。
女房の親御さんには結婚写真のお膳立てをしていただきまして、衣装を借りましての
結婚撮影をし、アルバムを作っていただきました。
女房の白無垢がまぶしく見えたものでありまして、アルバムが出来上がったときには
お袋に見せたんですが、あんた、撮影の時ぐらいヅラでも被ったほうがよかったんじゃ
ないかと。ヅラを被ったほうがおかしいんじゃないのか?
カメラマンは撮影が進みますってぇと興が乗ってきたようでありまして、
なんだかいろんなポーズをさせる。
出来映えはいいんですが、撮影の時はありえない重心のかかり方に女房共々
早く撮影を終えてくれないかなと真剣に思いましたな。ま、それもいい思い出に。
いろいろあったような、何も無かったような、ま、いろいろあったにせよ、
あたしと女房の間には、付き合っているときと何も変わらない心持が。
なんにせよ、今までありがとう、そしてこれからもよろしく。
(我が家は今日も平和です。夫婦善哉)