お客様からのご依頼で別誂えをいたしました「女持ち渋扇」でありまして、
お願いをいたしましたのは、京都の老舗「宮脇売扇庵」であります。
あたしどものような小間物屋は、作り置いてお客様にご提供する
お品ってぇのもあるんですが、お客様の意向に沿って作る「別誂え」
ってぇものも多く承りまして、どちらかといいますってぇと別注のほうが多い。
扇ってぇのは、骨の数、つまり「桁数」によって扇面にする紙の種類を変える。
桁数が多ければ柔らかな紙を、桁数が少なければ頑丈な髪を用いまして
扇骨に張るんです。つまり、同じ色であっても、張れる扇骨と張れない扇骨
ってぇのがありまして、なかなかに難しい。
女持ちではなかなかに珍しい渋紙の扇でありまして、こちらの扇面は
黒でありますが、本来は男持ちの扇骨に張るものでありまして、女物は
ないんですが、別誂えで女持ちの扇骨に合うように染めていただくことに。
こちらの朱色の渋紙を使った扇が依頼されたものでありまして、ちょいと粋な
雰囲気のあるものであります。あまり肩肘張らずに使えまして、垢抜けている。
扇子は痛みやすいこともありまして、「鞘」がありますってぇとよろしい。
今在庫しているのはこんな色目でありまして、お好みで選んでいただけます。
あたしどもでもいくつか在庫をしたいと思いましての別注扇は、渋紙の色を
朱と黒の二揃えで頂くことにいたしました。内、朱の渋扇のひとつはご依頼
を頂いたお客様へ。
末永く可愛がっていただけたらと思っております。
今般の別注ご依頼ありがとうございます。
(なかなか垢抜けていますな)